曲阜師範大学 国際文化学科4年 枌野初音 <4号 2023年9~10月>

1. はじめに

9月から後期が始まり、人間関係の変化、環境の変化、様々な変化の季節となりました。その変化の一部を今回はお伝えします。

2. 寮の問題

新型コロナウイルスの脅威がだんだんと薄れ、今学期は多くの留学生が曲阜師範大学にやってきました。前期の頃は留学生が約30人だったのに対し、今学期はなんと約60人になりました。今までは留学生全員の顔と名前が覚えられていましたが、もう覚えきれないほどになりました。悲しいことに人数が増えれば問題も増えるというもので、私たち留学生のWechatのグループでは、注意勧告が多くなりました。多くはキッチンや洗濯機など共用のものについてがほとんどで、使った後にはきれいに掃除する、勝手に人の物は使わないなど、そこまで難しいものではないのですが、大人数ましてや国が違う者同士が共に住んでいる留学生寮では起こりうることだと思います。私たち日本人が住む3階はそのようなことが起こっていないのでほっとしています。

3. 後期のクラスの様子

新学期が始まり、前期のクラスメイトは留学を終え、帰国する人や本科生になる人が大部分で、本学期の私たちのクラスは大きく変わりました。

まず、前期では授業のレベルが中級から初級に変更されました。最初、この変更に納得がいかず、先生に中級への変更の相談をしましたが、先生曰く、今学期はクラスメイトの中国語のレベルがHSK(中国語検定)3級から5級まで幅広く、中級で授業を行うとレベル差による問題が生じるため、このような決定になったそうです。中級の授業は日照のキャンパスでしかされず、どうしても受けたいのであれば、キャンパスの変更をする必要があると伝えられました。それは私の望むところではなかったため、初級を受けることにしました。初級の内容は中級に比べ簡単ですが、覚え切れていなかった単語や文法の復習になり、中国語の基盤を整えることができています。HSK対策に関しての授業では、私たちのクラスは4級を対策しているため、5級取得を目指すために私は、先生に相談して、その授業には参加せず、オンライン授業で5級に関する内容を学んでいます。先生方は私の要望に対して真剣に悩んでくださり、その結果、自分の満足する形で授業が受けられているため、相談してよかったと思っています。

次にクラスメイトが私たち日本人2人以外すべてロシア人に変わりました。クラスは私を含め14人おり、前期の時よりも2倍近く人数が増えました。授業の合間にはロシア語が聞こえ、慣れない間は疎外感から少し苦しく感じていました。今ではほとんど慣れ、会話の中に少しロシア語を入れてみたりと楽しくクラスメイトと会話しています。留学生と接する時、相手の母国語の「はい」、「いいえ」、「ありがとう」や挨拶などの短い言葉を留学生から教えてもらい、実際に使うと距離が縮まる気がします。私たちもそうですが、母国語を少しでも学んでくれたり、話したりしてくれるとうれしいように、留学生もうれしいのだと思います。対人関係すべてに言えることですが、相手に興味を持つことが距離を縮める一番の方法だと思います。

授業の様子
(授業の様子)
クラスメイト
(クラスメイト)

4. 中国でのHSK受験

夏休みは開催地の関係で日本でHSK5級を受験せず、9月頃に中国で受験しようと考えていました。ところが今年HSKの受験方式が大きく変わり、HSKとHSKK(HSK口語試験)の同時受験が必須になりました。今まで中国は、日本と同じようにHSKとHSKKは希望により同時受験かそうでないかが選べました。必須になることで受験費が2倍の約2万円になり、なおかつHSKKはHSKのレベルによって決まるため、閲読と筆記に特化した日本人にはなかなか厳しいものになります。例えばHSK5級、6級を受ける場合はHSKK高級を受ける必要があり、初級すら受けたことのない私にとっては、この変更は大きな問題でした。先生に相談したところ、私の今のレベルでHSKK高級の合格は難しく、帰国後の受験を勧められたため、帰国後すぐに受験することになりました。この変更の通知は去年からHSK公式サイトでされていましたが、調べ不足で知るのが遅くなってしまい、中国でのHSK受験は叶わなくなりました。

5. 入学式、サークル紹介

9月に曲阜師範大学では入学式があり、一年生と留学生のみの出席でした。日本では大学の入学式は、スーツを着ての出席ですが、曲阜師範大学では、一年生は必修の軍事訓練後の参加であったため、軍服のような訓練服を着ての出席でした。留学生には曲阜師範大学のポロシャツが配られ、それを着て出席しました。各個人に一本ずつ小さな中国の国旗が配られ、入学式の最中に国旗を振るという日本ではなかなか見ることのない光景でした。

10月にサークル紹介が一日かけて行われました。広場に各サークルがテントを張り、サークルの活動内容や体験を行っていました。

入学式の様子
サークル紹介
(サークル紹介)
入学式
(入学式)

6. 曲阜師範大学の旧校区と新校区

私たち留学生は、普段旧校区で生活をしています。そして去年、曲阜師範大学に新たな校区か建設されました。旧校区は旧校区で心落ち着くようなつくりになっていますが、新校区内には校舎や寮、食堂はもちろん、池や橋もあり、中国らしさにあふれた場所になっています。

新校区の様子1
新校区の様子2
(新校区の様子)
新校区の図書館
(新校区の図書館)

7. 日本語の授業への参加

ある日、曲阜のキャンパスにも日本語の授業が開講されていると聞き、日本語教育に関心のある私は先生に頼み、見学させていただきました。授業を受ける大半が英語教師を目指しており、専攻が日本語でないため、あまり活気はありませんでしたが、中国語を使って日本語を説明している様子が興味深く感じられました。曲阜キャンパスでの日本語の授業の形としては、先生が単語や文法の解説をするという日本とほぼ同じ教育方法でした。日照のキャンパスには日本語専攻があるため、機会があれば、見学してみたいです。

授業前の教室
(授業前の教室)
日本語の授業
(日本語の授業)

8. 中国人の友人

後期になり、また新しく中国の友人ができました。中国人の知り合いを作るのは難しく、待っていては交流する機会すらありません。そのためサークルに入部したり、ネット上で探す必要があるのですが、私の場合、留学生の友人の紹介で、日本に興味がある男女2人を紹介してもらいました。それぞれ2人の男女と私の関係性の変化が正反対で面白かったので紹介したいと思います。

ある日、留学生の友人に日本のことについて質問がある男の子がいるから紹介したいと言われ、Wechatに彼を登録しました。最初は楽しく会話ができていたのですが、一週間が経った頃、話の雲行きが怪しくなり始め、当時日本で問題となり、中国でも話題となっていた福島第一原発処理水の海洋放出に関することを質問されました。私としてはこのような話題は知り合ってから日の浅い人と話したくはなく、話題を変えて楽しい話がしたいと言ったのですが、彼は、日本はなぜこのような悪いことをするのかと言い続け、自分には専門知識がないためよくわからないと伝えたのですが、聞く耳を持たず、終いには、あなたは私の質問から逃げたと言われました。彼の言い方は討論ではなく、相手を非難するような言い方だったため、胸が苦しくなりました。周りの人と相談し、彼をブロックすることにしました。人と話すときに政治と宗教には触れない方がよいと言われますが、実際話すとどうなるか身をもって知ることができました。仲がよいなら別かもしれませんが、一方的に母国を悪く言われるのは心にくるものがありました。

そして同じ留学生の友人から日本人と交流したい女の子がいると言われ、交流を始めました。彼女は日本語を学んでおり、大学の授業以外にも独学で日本語を勉強しているようでした。普段の会話は中国語で話し、お互いがお互いの国について興味があったため、実際に会って話をしたときには、あっという間に時間が過ぎていました。今では旅行の計画を立てる程のよき友人です。

上記の2人はほぼ同タイミングで知り会いましたが、結果は真反対となりました。私はこれこそが留学の醍醐味であると思っています。悲しい体験も嬉しい体験もどれもが留学の貴重な体験であると思います。

中国人の友人
(中国人の友人)

9. おわりに

今回の体験記では、暗い話が多くなってしまいました。ですがそれは留学に慣れ、視野が広がり、楽しい毎日が当たり前となったからです。毎日いろいろなことがありますが、困ったときには友人や先生と相談しながら、楽しく過ごしています。帰国後に後悔をしないように毎日を大切に過ごしていきたいと思っています。

曲阜師範大学内のサッカーの試合)
(曲阜師範大学内のサッカーの試合)