ラップランド大学 国際文化学科4年 秋田桃花<最終号 2023年5~6月>

初めに

気づけばもう春で、早くもフィンランドに来て約一年が経とうとしています。春と言っても6月の頭に雪が降るなど、「ああフィンランドらしいな」とわくわくした気持ちで外を眺めていました。5月下旬には多くの留学生が帰国または旅行を始め、ロヴァニエミは少しがらんとしています。私は今回、旅行はしませんでしたが、その分ゆったりここでの生活を楽しみました。この定期報告書が最終となりますので、この2か月の経験とこれまでの生活を少しだけ振り返ってみようと思います。

フィンランドで見つけたつくし
フィンランドでつくしを発見しました

5月の出来事

だんだん暖かくなってきたのでOunasvaaraへハイキングに行きました。フィンランドの木々のほとんどは針葉樹林のため一年中を通して枯れることはありませんが、冬よりも鮮やかな緑色をしていてとても綺麗です。私は花粉症(特に杉)がひどいのですが、フィンランドの花粉はあまり影響してこなかったようで快適に過ごすことができました。動物たちも春になると活発に動き始め、今回のハイキングではリスやウサギ、様々な鳥を見かけました。リスの毛は冬になると灰色に、春になると手足の部分がオレンジ色に生え変わります。またウサギは冬の真っ白な毛とは違って、灰色と茶色がかったような毛色になります。

リス
立派なリスを発見
ウサギ
ウサギも茶色がかってきました
ハイキングの様子
友人とハイキングへ

ミッドサマーについて

フィンランドにはミッドサマー(夏至祭)という日があり、長い冬のあとの夏の訪れを祝います。ミッドサマーでは、都会から離れサマーコテージに行ってまったり親戚と過ごしたり、バーベキューをしたりして夜通し楽しみます。この日は1年の中で最も日照時間が長い日と言われてはいますが、驚いたことにすでに6月中旬には日が沈まなくなりました。残念ながら今年は6月24日なのでフィンランドでこの日を迎えることはできませんが、近い将来体験できることを楽しみにしています。

フィンランドの夜はとても静かで落ち着いていて、外はジャケットなしではまだ少し肌寒く感じます。家の近くには大きなkemijoki(ケミ川)が流れており、その景色は言葉では表しがたいほどの絶景です。よく夕方、日没ごろになって涼しくなると川のほとりに散歩に行って、緑に囲まれた川を見ながら気持ちをリフレッシュさせるのが日課でした。

Kemijoki
家の近くに流れるKemijoki。本当に美しいです

大学の講義について

多くの留学生は5月の半ば、早い人は初旬にすべての講義・テスト・課題が終わっていました。私の場合、教育実習の課題ともう一つのUnderstanding Your Own Cultureの課題締め切りが5月末だったので、他の人よりも少し遅めに休みを迎えました。教育実習の課題は20ページのエッセイだったので、早くから取り掛かっていたものの書く量が多く大変でしたが、それよりも書きたいことが多すぎて内容を絞るのにとても時間がかかりました。この課題のおかげで実習を行ってそこで終わりではなく、きちんとリフレクションもできたので、4週間を改めて振り返る良い機会になったかなと思います。

Understanding Your Own Cultureでは自分の文化の特性や人々の行動パターン、社会における文化の現れなどを具体例と混ぜながらエッセイを作り上げました。具体例をアカデミックな表現を使って言語化することが私のこれまでの課題でしたが、今回はこれまでのエッセイの反省点や改善を踏まえ書いたところ、非常に良いものを作り上げることができました。教授にもこれまで見た中で一番良いエッセイだと褒めていただき、この出来事がきっかけで日本での卒論も頑張ろうというモチベーションを得ました。成績がすべてではないですが、留学前・留学中ともに周りに流されず努力・試行錯誤して良い成績をキープしてきたので、そのような負けん気と粘り強さは私の長所かもしれないと気づきました。留学中はどうしてもパーティー、友達の誘い、旅行、趣味やスマホなどたくさんの誘惑があります。いろいろな人の意見がありますし、留学はもちろん楽しくあるべきですが、勉学は最優先だと私は個人的に思います。

私は出国前に日本人留学生と行動するのは極力避けていこうと決めていたので、現地では主にフィンランド人やほかの国の人たちと過ごすようにしました。同じ人種同士で過ごすのは確かに快適ですが、そのコンフォートゾーンから抜け出して様々な人と交流し輪を深め、たくさんのことに挑戦することが個人の大きな成長につながります。留学生活をどのように作り上げていくのかは自分次第ですが、できるのであればこれまで関わったことのない他の国の人たちとしっかり交流し、グローバルに視野を広げることが大切だと思います。

フィンランド人の友人と作った広島風お好み焼き
フィンランド人の友人と広島風お好み焼きを作りました

1年を振り返って

私にとってこの留学は、人生の大切なターニングポイントになりました。大自然に囲まれ、たくさんの人と出会い成長していく中で、自分にとって幸せとは何だろうと考えるようになりました。世界一幸福な国フィンランド、実際私は留学するまで本当の「幸福」について知らなかったのだと思います。フィンランドの根底にある考え方「well-being」、それは物質的な幸福だけでなく心身・社会的に良好な状態であることを指します。自然を楽しみ、小さなことに感謝し、幸せを見出すフィンランドでの生活は、人々を自然と幸福な状態へと導きます。

忙しい社会から少し離れてみて、自分自身と丁寧に向き合い毎日を大切に暮らすという、当たり前に思える時間が私には欠けていたのかもしれません。豊かな自然とともにゆっくり時間が過ぎていくフィンランドでは、自分自身について考える時間が確保できました。様々な人と出会い、いろいろなことに挑戦し続けたこの留学を通して、自分は何をしたいのか、これからどのように生きていきたいのかなどの自分の正直な気持ちにも気づけたかなと思います。このように話していると楽しいことしかなかったように聞こえますが、実際フィンランドで生活する中でたくさん辛いことや大変なことを経験し、たくさん悩みました。しかしそのすべてが今の私を作り、また私を大きく成長させてくれる糧になりました。

これから留学に行かれる方もいらっしゃると思いますが、どうか健康に気をつけて楽しんでください。留学は行くことがゴールではなく、留学中・帰国後どのように行動するかが人生の大きな分かれ道になります。決して後悔のないよう、すべて一生懸命頑張ってください。すぐ目に見える結果を見ることはできないかもしれませんが、きっと後から「留学に行ってよかったな、成長したな」と思えると思います。本当に心から応援しています。

最後に、私のこの度の留学に関しましてサポートしてくださった先生方、職員の方々、家族、すべての人々に感謝を申し上げます。ありがとうございました。