ラップランド大学 国際文化学科4年 板屋花奈<最終号 2023年5~6月>

はじめに

5月22日、ついにロヴァニエミを離れる日がやってきました。8月にフィンランドに到着していきなりホームシックになってしまい、10か月という期間がとても長く感じて不安な気持ちもありました。しかし、気づけば毎日が楽しく時間の流れが早く感じられるようになり、日本に帰国した今では、あっという間の10か月間だったように感じています。帰国前のロヴァニエミの気候はずいぶんと暖かくなっていて、街中の植物が一気に芽を出し、葉をつけ始め、昨年の夏にロヴァニエミに到着した頃のような景色が見られるようになってきて、懐かしい気持ちになりました。

友人と散歩中の一枚
暖かくなってきたので友人と散歩しました

大学生活

4月までに授業がある科目は全て終了したので、5月の帰国までは授業がなく、個人で課題や試験に取り組むことで単位をもらうタイプの科目に集中しました。その科目をご紹介します。

・Cultural Sociology

この科目は、自分の好きな時間に個人で学習をして、課題の提出と試験を受けることで単位をもらえるBook examsというタイプの科目でした。学習スケジュールや試験日程を自分で決められるので、他の科目の授業と時間が被る心配もありません。

Cultural Sociologyでは、指定された3冊の本を読み、EXAMというシステムを使って試験を受けるか、3冊それぞれについてエッセイを書くという内容でした。文化や社会を発展させるときに生じる問題や、文化集団が出来上がる過程、文化と政治の関係などを学び、私自身の経験と関連する部分もあって面白かったです。

ちなみにフィンランドでは、わざわざ大学の図書館に行って本を探さなくても、大学図書館のサイトにログインすればほとんどの本をオンラインで読むことができるので、いつでも好きな場所で勉強できてとても便利でした。

フィンランドの友人との別れと出会い

5月になってからは、帰国の日まで留学中にお世話になった人たちと会ってたくさん遊びました。その中でも、友人の家で一緒にEurovision Song Contestを観たのはとても印象に残っています。Eurovision Song Contestとはヨーロッパで毎年開催される歌の祭典で、ヨーロッパ中で生中継され、各国の代表がパフォーマンスをして優勝国を決定します。ヨーロッパではかなり重要なイベントのようで、フィンランド人も他のヨーロッパの国からの留学生もとても盛り上がっていました。特に今年はフィンランドの歌手Käärijäの『Cha Cha Cha』という曲が注目されていて、みんなKäärijäの衣装を真似して応援していました。結果は、惜しくもお隣のスウェーデンに敗れフィンランドは準優勝でしたが、ライブ会場の盛り上がりは『Cha Cha Cha』が最も高く、大会後にヨーロッパですごく流行っていました。

また、新たに気の合う友人との出会いもありました。お互いに「もっと早く知り合っていたらよかったね。」と話したりもしましたが、帰国した後もオンラインで定期的にお互いの近況報告などもしていて、交流が続いています。

留学の初めから帰国するギリギリまで、国籍や年齢などに関係なく、共通の趣味について意見を交換できる友人と出会えたことはとても貴重なことだと思います。留学でのご縁を大切に、これからも連絡を取って交流を続けていきたいと思っています。

ラップランド大学での交換留学を終えて

私が交換留学に応募するのを悩んでいた当初は、ラップランド大学は文化創造学科の学生などアートやデザインに興味のある学生が行くものだと思い込んでいたため、留学先の候補に入れていませんでした。しかし、今回国際文化学科から留学してみて、国際文化学科の学生でも自分の興味に合わせて十分に学べる環境だと感じました。

私は教員志望ではありませんが、フィンランドのメディア教育やジェンダー教育に興味があったためEducation学部に所属していました。留学前は「教育に詳しくないのにEducation学部で大丈夫かな?」という不安もありましたが、Education学部に所属したからといって、教育ばかり学ばなければならないということはなく、自由に他の学部の授業も履修することができた(Art and Design学部の科目は学部内の学生が優先のため、履修したい場合は各科目の先生に要相談)ので、自分の興味のあることを幅広く学ぶことができました。

Education学部は教職関係に興味のある方には非常におすすめだと思います。世界的にも有名なフィンランドの教育を実際にフィンランドで学べることはもちろん、現地の学校での教育実習も体験できます。私は教育実習には参加しませんでしたが、大学で授業を受けているだけでも日本との教育の違いをたくさん発見できてとても勉強になりました。授業中には他の国からの留学生と意見を交換する時間も多く、様々な国の教育の現状を知ることができるのも面白いと思います。

また、私はフィンランドの「平等」を大切にする社会の雰囲気がとても印象に残っています。日本では見たことのないような「平等」を普段の生活でよく見かけたからです。最近は、日本でも様々な場面で「平等」という言葉を耳にしますが、留学前は平等な社会とはどういうものなのかはっきりとイメージできませんでした。しかし、「平等」を大切にするフィンランドから日本の現状について考えたことで、今まで見逃していた日本社会の課題を見つけ、疑問を持つことができました。そして別の視点から物事を見ることの大切さを感じました。

おわりに

留学中には悩んだこともたくさんありましたが、そんな経験の中で自分と向き合う時間も多く、自分をより深く理解しながら成長できた留学になりました。日本とフィンランドは、距離的にはすごく離れた国同士ですが、その距離からは考えられないほど国民性や環境などが日本とよく似た国なので、とても過ごしやすいと思います。日本の文化や日本語に興味を持っている学生も多いので、少しでも興味のある方はぜひラップランド大学への交換留学に挑戦してみてほしいです。

この留学を支えてくださった全て方々に感謝の気持ちでいっぱいです。フィンランドでの全ての経験や出会いを大切に、今後も頑張って行こうと思います。ありがとうございました!

大学の写真
アパートの写真
お世話になった大学とアパート