ビショップス大学(2018年度日本語TA)国際文化学科4年 松尾彩花 <1号 2018年9~10月>


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はじめに

 ビショップス大学で働き始めてはや2か月が経ちました。残り半年という時間を意識する時、自分がこの2か月で成長できているかどうか不安になります。今回は出発から入寮まで、授業について、TAの仕事、教えるということ、ケベックでの生活、人間関係について述べていきます。

出発から入寮まで

 私は8月31日に成田空港を発ち、約13時間のフライトを経てモントリオール空港に到着しました。その日は全体的な飛行機の遅れにより9時間遅れて出発し、飛行機に乗る前からだいぶ疲れが溜まっていたのを覚えています。しかし今年の6月から直行便が就航したため、乗り換えなしで到着できるのは便利でした。モントリオール空港に到着すると緊張しながらも入国審査や移民局での手続きなどを済ませ、無事に短期労働許可証をもらうことができました。その日はホテルで1泊し、翌日バスでシャーブルックに向かい、私が今年度アシスタントとしてお世話になる日沢先生と奥様がここでの生活に必要な準備や入寮の手伝いをしてくれました。

私の寮は24時間静かでとても過ごしやすいです

授業について

 秋学期は月曜日から木曜日に初級のJSE101、中級のJSE201、上級のJSE301、文化と社会のJSE150の四つの授業があります。ここでは学生の出身地や母語が多種多様で、なおかつ一クラスにつき週に3時間しか授業の時間が取れません。そのため日沢先生は日本語、英語、フランス語を用いて、既存の教授法の型にはまらないオリジナルな教授法で授業を行っています。
 使用教材はJSE101では『初級 日本語 げんきⅠ』、JSE201では『初級 日本語 げんきⅡ』です。どちらのクラスでも毎回小テストを行い、その日に学んだ項目の宿題を出し、前回の宿題の回収をしています。JSE301は日本に留学経験のある学生が履修しており、JSE101、JSE201と比較すると学生に高いレベルを要求しているクラスだと思います。基本的に日本語を用いて授業を行い、日本のテレビドラマ「Beautiful Life」をもとに日本人が日常生活で多用する表現を勉強したり、より日常的な日本語の文法項目を教えたり、小説『佐賀のがばいばあちゃん』をExtreme Readingという方法を用いて読み進めています。

TAの仕事

 一つの授業(文化と社会のクラス以外)につき20~30分ほどの持ち時間で、主に機械的練習や応用に当たる部分を担当しています。今年度はTAが私ともう1人、徳島大学から派遣されている学生の2人いるので、授業当日の朝2人で教案を作成し、午後に授業を二つ行い、その後反省会をして帰宅します。帰宅後に宿題や小テストの採点を行います。また、月曜日には日本語合唱クラブで1時間半歌の練習を行い、授業のない金曜日に1週間分の宿題や小テストの成績ファイルを作成しています。
 日沢先生のアシスタントとして働けていることはとても恵まれていると感じます。未熟な私たちですが、とても自由に授業をさせてもらっており、さらにケベックや日本の面白さを考えるきっかけをいただいています。自分の無知蒙昧さに日々気づかされ、ケベックのこと、日本のこと、社会のことについてもっと勉強しなければならないと思っています。

教えるということ

 秋学期の授業が始まる前、日沢先生は「劣等感はもたなくていいから先生としてのプライドをもちなさい」と言ってくれましたが、教材の質や時間配分がなかなかうまくできない、臨機応変に動けない、学生からの質問に答えられないなど、まだまだ課題が多いです。ただ授業は、人対人で構成されるため思い通りにいかないのが当たり前ですし、同じ教材を用いてもその日のお互いのコンディションなども少なからず影響していると思います。それに加えて日本語の言語としての難しさもあるので、そう考えると一気に成長できるものでもないのかもしれません。
 また人の前に立つ手前、暗い顔をして授業をすることはできません。特に9月は気持ちの浮き沈みが激しかったり、自分に自信や余裕がなかったりして、授業に行く前に「もっと明るくしなくちゃ」と自分に言い聞かせていました。しかし今は自然に笑顔になれる自分がいます。学生のもっと勉強したいという意欲に支えられているのだと思います。

初級クラスの授業風景

ケベックでの生活

 ここに来て1週間が経つ頃、日沢先生と奥様のポリンさん、徳島大学から同じく日本語TAとして来ている飯田さんとSainte-Élisabethにピクニックに行きました。そこでは教会を改装してチーズを貯蔵しており、その隣にある建物で様々なチーズや焼き立てのパンなどを買うことができます。その日は確か平日だったのですが、昼間から多くの人がワインや果物、チーズを持って来てピクニックを楽しんでいました。
 私が住むシャーブルックはケベック州の南に位置する都市で、ケベック州で最大の都市であるモントリオールからは車で2時間程です。シャーブルックでの生活は、山口県立大学と同じように車や公共交通機関を使って出かけることが多いです。一歩大学の外に出るとそこはフランス語の世界で、フランス語ができない私がよく生きていられるなと思うくらい英語に触れることがありません。モントリオールに行けばBonjourhi(Bonjour+Hi)という挨拶があり、Hiと答えると英語で接客をしてくれたりしますが、やはりフランス語が話せると見える世界が違うだろうなと感じます。

Sainte-Élisabethでのピクニック

私が住んでいるシャーブルックには人々の生活を描いた壁画がたくさんあります。

人間関係

 人間関係というと何か問題があるのかと感じるかもしれませんが、そういう意味ではありません。私は留学生ではありませんが、ビショップス大学の寮に住み学生と同じように、毎日食堂に行き、たまにジムで運動するなどして生活しています。初めは自分の立ち位置に戸惑いましたが、今はTAとして仕事をする以外ではビショップス大学の学生と同じようにここでの生活を楽しんでいます。ありがたいことに日本人だからという理由で良くしてくれる人は少なくありません。そして日本人の女の子は特に人気があると思います。その人たちの優しさに甘えてしまうこともありますが、そうしているうちは日本に帰った時残るものが少ないと思います。私は意識しないとつい受け身になってしまいがちなので、良い意味で「人の目を気にしない」ことと、「人は物事を思いついて3秒経ったら脳がやらなくていい理由を考え出す」ということを自分に言い聞かせて、色々なクラブ活動やイベントに参加して人との関わりを増やす努力をしています。

おわりに

 シャーブルックでは昨日から少しずつ雪が降り始めました。日本語TAとしての仕事を全うし、自分が教えるだけでなく教わっている日々を楽しみながら、次回は少しでも成長した姿を報告したいです。