鈴木 隆泰


教員イメージ

教授 アジア文化論研究室

担当科目

Introduction to Buddhism, 宗教学

研究テーマ

  • 如来の外在性と内在性を巡る思想史,大乗経典より読み解く仏教の実像
  • 自己と他者(他人・世界)の関係性と共感性
  • 仏教の現代的・主体的理解

メッセージ

 教員の専門は、文献学的方法論に立脚したインド哲学仏教学研究・宗教学研究です。個人的には『法華経』や『金光明経』に代表されるインド大乗経典の思想史研究がメインテーマですが、仏教以外の宗教文化に関して卒論を書くゼミ生も少なくなく、指導可能範囲は広いです。  また、日本のアニメーション作品には、宗教の知識なしには正確な理解ができないものも多く、"宗教と日本のアニメーション"を卒論のテーマとする学生さんもいます。教員個人もコアなアニメファンであるため、毎回熱い議論が交わされています。
 ゼミ生には、教員が英語で開講する「Introduction to Buddhism」への出席義務が洩れなく課されます。欧米からの留学生と机を並べて学べることは、国際文化学科ならでは醍醐味と言えるでしょう。これまでは、講義の最終回で市内の寺院へと出向き、実際に宗教行事を体験してきました。
 見て、考えて、感じるゼミ、それがアジア文化論研究室です。

平成18年度山口県立大学研究創作活動助成 優秀賞受賞

 チベット語資料を用いた、仏教における教義と儀礼の諸相に関する研究―『金光明経』「堅牢地神品」を中心に―で受賞した。『金光明経(Suvarnaprabhasottamasutrendraraja)』「堅牢地神品(Drdha-parivarta)」のチベット語を含む諸資料を用いて、インド仏教における教義と儀礼の諸相について、文献学的方法論に則り考察を施した。その結果、「世俗的でインドで一般的な功徳を説く「堅牢地神品」の編纂を通じて、『金光明経』の制作者たちは、『金光明経』の価値や有用性を支持者たち、とりわけ、それ以前は仏教徒ではなかったインド農村部の人々に向けて強調し、彼らから経済的支援を得てインド宗教界に踏みとどまり、仏教の伝承と実践という義務を果たそうとした。その際、布教手段として用いられた方策の一つが、攘災招福を祈願する種々の儀礼であった。」という暫定的結論を得た。どれほど高邁な理想を掲げ、高尚な思想・信条・理論を奉じようとも、仏教を伝承・実践していこうとする出家者たちは自ら生活の糧を稼ぐことが禁止されている以上、在家者からの支援、特に経済的支援がなければ、その務めを果たすことはできない。このように『金光明経』「堅牢地神品」の考察を通じて、単に論理的・哲学的アプローチからだけでは分からないインド仏教の実像に、今まで以上に迫ることができた。