桜の森アカデミー「在宅ケアマイスターコース」講座Ⅶ「認知症の理解」

 「桜の森アカデミー」は、一般県民と学生が一緒に学びながら地域活動に貢献できる人材を育成することを目的とした共生教育の場です。
 在宅ケアマイスターコースでは、家族や地域の介護力を高めるために、介護に関する基本的な知識と技術を有する人材の育成を目指します。
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 講座Ⅶ「認知症の理解」では、介護において認知症を理解することの必要性と、認知症の方を介護するときの判断の基準となる原則を学びます。

 7月12日(水)は、グループホームなのはなの家の施設長、越野淳子氏を講師に迎え、「認知症にともなう心と体の変化と日常生活」と「家族への支援」の2つの講義を行いました。


 前半は、認知症の進行に伴って現れる症状の把握、そして、その上でどのようなケアが必要かについての講義です。
 認知症に必ず現れる症状として、記憶が抜け落ちる、時間や場所などの把握が出来なくなるなどがあります。このため、越野氏の施設では、時計やカレンダーを見やすい所に置く、トイレの手すりや出入り口に風鈴をつけるなどの工夫をしています。
 また、徘徊や不潔行為などの症状は周囲の不適切な対応が原因となり現れることがあることから、排泄時に羞恥心への配慮を行う、慣れ親しんだ生活用品を使ってもらうなどの工夫をしています。


 さらに、介護の現場で大切なことは利用者の尊厳を守ることであり、認知症の方は何もわからなくなるわけではなく様々な不安とともに生きているため、本人のプライドを大切にして、本人の気持ちに添った関わり方することが必要との説明がありました。

 後半は、家族介護者の大変さやレスパイト(休息)の重要性、そして、どのように支援していくかについて話がありました。
 認知症の方の家族は、在宅の介護に限界を感じている、一人の時間がとれないなどの介護ストレスを感じています。家族が介護を続けていくために欠かせないのがレスパイト(休息)で、方法としては、家族会への参加や家事の代行サービスなどがあります。
 「いつも介護をしている人がちょっとだけ休息をする、それっていけないことですか?そんなことないですよね。」との問いかけに受講生たちは頷いていました。

 そして、介護職が家族介護者の本来持っている力を出せるように支援していく「家族へのエンパワメント」について説明がありました。
 「少しお疲れのように見えます」など見えたままの事実を伝える「ハッとメッセージ」と、「大丈夫ですよ」「いつでもお話しください」など家族介護者に安心感をプレゼントする「ホッとメッセージ」は、家族介護者を励まし、介護職と家族介護者との信頼感を築くツールとなるとのことでした。

 また、介護職だけでなく、一般の方が行う家族介護者への支援として「認知症サポーター」についても紹介がありました。認定されると「認知症の人を応援します」という意思を示すオレンジリングが渡されます。


 最後に、「今日一日隣で頑張った相手に『ホッとメッセージ』を書いてプレゼントしてください。」との講師の言葉により、受講生同士お互いにメッセージを送り合い、温かい気持ちで講座を終えました。