「上山満之進に学ぶ会」地域公開フォーラムを開催しました

 本学が推進している「地(知)の拠点整備事業」(COC事業)では、山口県の地域課題解決に向けて「やまぐち学」研究チームを構成し、山口県のインバウンド観光に関する研究を行っています。

 この研究の一環として、7月10日(月)防府市華浦公民館にて、上山満之進に学ぶ会との共催で地域公開COCフォーラムを開催しました。
 本フォーラムでは、台湾との観光交流の発展を進める山口県として非常に有望な訪問地のひとつが防府であることを踏まえ、上山満之進と陳澄波(ちんとうは)、そして小澤太郎の思い出を元に事例発表と意見交換をしました。


 100名近い参加者で満席の中、開会にあたり、歴史家であり上山満之進に関する著作のある児玉識氏から、「上山満之進と台湾」と題して講話があり、上山満之進が行った台湾総督としての統治や退任時の慰労金のほとんどをあてた先住民族の研究支援、また、最晩年に全財産を投じた三哲文庫(現市立防府図書館)の建設など、その足跡について説明がありました。

 次に、台湾国立中央研究院の博士研究員である邱函妮(きゅう・はんに)氏が、再評価を受けつつある画家「陳澄波(ちん・とうは)」の画業や、三哲文庫に所蔵されていた油絵『東台湾臨海道路』について解説しました。
 台湾総督の退職慰労金の一部を用いてこの絵画の制作を依頼したのが上山満之進であり、上山が大切に所蔵し、防府市に寄贈されたことで、台湾では数少ない陳澄波の作品が日本で再発見されることとなりました。これを喜び、陳の孫が防府市まで来訪したことなどを受け、今後、この絵画をきっかけとした防府市と台湾の交流を深めることの意義を強調しました。

 さらに、上山満之進と交流があった元山口県知事、小澤太郎の子息である小澤克介氏(元衆議院議員)が、上山ゆずりの父君の気骨について熱弁をふるいました。また、小澤太郎が台湾総督府に赴任した1930年は、陳が『東台湾臨海道路』を描いたまさにその年とのこと、縁を感じるエピソードもありました。

 一枚の絵画が紡ぐ防府市と台湾のつながりに耳を傾けた後は、若い二人の講師から、現在の山口県と台湾との観光交流の可能性についての講演に移りました。

 まず、台湾在住のライター、栖来(すみき)ひかり氏は、著書『台湾、Y字路さがし。』を元に台湾の魅力を紹介しつつ、台湾総督を務めた周南市出身の児玉源太郎の私設庭園「南菜園」など山口県ゆかりの史跡探しツアーを提案しました。


 また、山口県観光連盟の黄楷棻(こう・かいふん)氏は、台湾からの観光客を増やすための山口県の魅力スポットを美しいスライドでユーモアたっぷりに紹介し、陳澄波の絵が防府にあれば、台湾からのインバウンド観光の新たな訪問地になり得ると語りました。


 山口県と台湾との交流について、過去から現在、そして未来に繋がっていくフォーラムとなりました。